何はともあれ、原因を追究することが先決。初期対応が最小限の出血を抑えることができます。悩んでいる場合ではありません。専門家の臨場による原因の特定が最優先です。
- 発電停止一つにも様々な原因が。現状臨場する際は、その原因を特定しなければ。
- ※下記になるのは一例にすぎません。
・PCS故障(最多原因)・接続箱/ケーブル断線(絶縁不良も含む)・パネルの劣化・汚れ・破損(影や鳥のフン含む)・契約や名義ミス・電力会社とのトラブル・監視装置の異常・契約更新見逃し多発・ブレーカー遮断放置(台風後の典型例)・ケーブル盗難・犯罪被害・自然災害 豪雨・大雪・雷・出力抑制(系統の電力需給など)その他
臨場前の事前情報の収集(出発前)
・事前ヒアリング オーナー・オーナーまたは管理会社から状況聴取(いつから停止?PCSエラーコードは?)
・書類確認 系統図、機器仕様書、メンテナンス履歴、遠隔監視データ
・持参機材の確認 絶縁抵抗計、クランプメーター、IRサーモグラフィー、パネルテスター、端子締付工具、予備ヒューズなど

- 臨場前に「何が疑わしいか」を絞り込む。準備不足で再訪問になるのは時間の無駄。
- 現地到着後の一次確認(目視・安全確認)
・安全確認 高圧系統(600V以上)ならヘルメット・絶縁手袋・絶縁靴装着。
・発電状況確認 パワコンの表示確認、エラーコードの有無、発電ランプの点灯状況
・外観チェック 雑草・パネルの破損・ケーブル露出・盗難・ブレーカー遮断など
・系統連系確認 単線図と実配線が一致しているか(無資格工事による接続ミス多発)
「大きな破損・遮断・盗難」が原因であれば、この段階で特定可能。

- 電気的診断(測定機器による本格調査)
- ・絶縁抵抗測定 絶縁抵抗計 ストリング単位で絶縁不良がないか。当社の場合はインピダンスを測定します。(基準は1MΩ以上)
・ストリング電圧 クランプメーター / DMM 異常に低いストリングは断線・接触不良・ホットスポットの可能性
・ストリング電流 クランプメーター パネル汚れ・影・故障パネルの検出に使う
・接地抵抗測定 アーステスター 接地が不十分だと感電・ノイズ・雷害のリスク増
・パネル温度確認 IRサーモカメラ ホットスポット、ダイオード異常の特定
ここでは「どこで電気が止まっているか」「どこで異常発熱しているか」を特定します。したがって発電していない夜間にはできない作業もあります。


PCS(パワーコンディショナー)の詳細調査
・エラーコード解析 メーカーごとにマニュアルで対応表がある(例:E-1100=系統異常など)
・入力電圧/電流 各MPPTに電圧が来ているか、短絡していないか
・PCS再起動 一度停止してリブート、改善されることも
・ログ参照 機種によってはログからエラー履歴が取れる
・PCSは原因なのか結果なのかを見極めることが重要(壊れたPCSの裏にケーブル盗難が隠れていた例も)
④ 周辺環境の確認(外部要因の調査)
・雑草・日陰 高さ1m以上の雑草は「完全遮蔽」。発電量に大きな影響。
・周辺建物・樹木の成長 建設時は問題なくても、10年後に日陰になることがある。
・動物被害 ケーブルがかじられていたり、糞尿による腐食も。
・気象履歴 雷雨・大雪・台風後など、自然災害の影響を調査。
ここで“環境由来”の要因があれば、技術だけでは再発防止にならないことご理解ください。
- 仮復旧・原因の切り分け・オーナー報告
- ・ブレーカーON・端子増締めなど応急処置 数分で復旧できるケースもある(が、原因は残す)
・不具合パーツの特定 ストリング断線、パネル単体故障、ケーブル切断等
・メーカー問い合わせ PCS故障・交換部品・ファーム更新の必要性を確認
・オーナーへ報告・説明 原因・リスク・再発防止策・見積もりまでセットで伝える
ここでの報告が保険加入していれば、保険適用の重要な要素になりますので「見える化されている」ことが大切です。

実務上の問題点(経験則)
※複数トラブルが重なってることが多い
※ブレーカー遮断“だけ”で済む場合もある 台風後の遮断で半年間止まっていた例も
※「草」と「通信障害」は見落とされがち 地上からの目視・SIMカードの期限切れなど
※PCSは“犯人”でなく“被害者”のこともある パネル・ケーブルも必ずチェックすること